水の都にときめいて
 美しい夕日にあいたくて、松江を訪ねました。夕日もそうですが、松江は文豪・小泉八雲が愛した地であり、松江城とその周りにめぐらされた堀川でも知られる所。まずは松江のまち並みを高いところから眺めたくて、松江城天守閣へ足を運びます。
 松江城は慶長16年(1611)、城造りの名手とうたわれた堀尾吉晴が亀田山に建てたもの。千鳥破風と呼ばれる屋根の形が素晴らしく、千鳥城とも称えられています。最上階の望楼に着くと、そこには360度のパノラマが。松江市街はもとより、静かに水をたたえる宍道湖、遠くは大山までが見渡せて、まさに千鳥の背に乗っているかのような気分にもなります。
 鳥の背から亀の背へ?次は舟に乗って、堀川めぐりへ。舟での川めぐりは福岡の柳川が有名ですが、こちらも次々に舟が出て賑わいを見せます。堀川は松江城築城の際に造られたもので、城や城下町を守るとともに物資や人々を運ぶ役目も果たしていました。そこを現代の屋形舟がゆっくり進みます。舟上から”亀の目”になって見上げる松江のまちは風情豊か。水辺の緑や花、川に架けられた16もの橋も情緒を添えます。
 さあ、今度は駕籠に乗って散策、という雰囲気漂うのが塩見縄手です。いったいは江戸時代の面影にあふれる所。地名は当時の中級武士、塩見小兵衛の出世を称えてつけられたそうで、一角には小兵衛のほか、城に仕えた武士たちの住んだ屋敷が270年前とあまり姿を変えずに保存されています。
 そんな落ち着いたまち並みが異邦人も気に入ったようです。松江に教師として赴任したラフカディオ・ハーン、のちの小泉八雲は、日本人女性との結婚を機に一角に居を構えました。旧居を訪ねると、八雲が好きだったという庭などが家屋とともに残され、かつての暮らしぶりを物静かに伝えてくれます。さて、お日さまも西に傾いてきました。そろそろ宍道湖へ向かいましょうか。きょうは天気に恵まれ、素敵な夕日が期待できそうです。
松江のガイド

松江城

慶長16年(1611)の築城で、堀尾家、京極家、松平家が居城。建物内には代々領主の関係資料が公開されています。
お問い合わせ:TEL 0852(21)4030
時間:8時30分〜17時(4〜9月は18時30分まで)※無休
料金:天守閣登閣550円
堀川めぐり

船頭さんの観光ガイドを聞きながら楽しむ、約50分間のゆったりとした水上散歩。冬はこたつ舟も登場。
お問い合わせ:TEL 0852(27)0417(堀川遊覧船管理事務所)
時間:10月21日〜11月30日…09時〜16時
時間:12月01日〜02月28日…10時〜15時
時間:03月01日〜06月30日…09時〜17時
時間:07月01日〜08月31日…09時〜18時
料金:1日乗船券1200円
塩見縄手

松江市の伝統美観地区に指定された松江城北堀沿いの約400mの通り。武家屋敷、小泉八雲旧居、田部美術館などが軒を連ねます。
お問い合わせ:TEL 0852(55)5214(松江市観光文化課)
小泉八雲旧居(ヘルン旧居)

小泉八雲が小泉セツと新婚生活を送った屋敷。八雲が「知られざる日本の面影」に描いた日本庭園も当時のままに残ります。
お問い合わせ:TEL 0852(23)0714
時間:9時〜17時(12〜2月は16時40分まで)
※12月16日〜12月29日、1月1日を除き、無休
料金:250円
小泉八雲記念館

小泉八雲の自筆原稿や遺品、セツ夫人が使った英単語覚え書きなど、1000点以上におよぶ貴重な資料を収蔵。
お問い合わせ:TEL 0852(23)2147
時間:8時30分〜17時(4〜9月は18時30分まで)
料金:300円
田部美術館(たなべびじゅつかん

元島根県知事で、茶人でもあった田部長右衛門が創設した茶道具中心の美術館。田部家24代に伝わるコレクションの中から、松平不昧公ゆかりの茶器や書、花入れなど、名品の数々を展示。日本の代表的建築家菊竹清訓設計。
お問い合わせ:TEL 0852(26)2211
時間:9時〜17時 ※月曜日休館(祝日の場合は開館)
        12月29日〜1月1日、展示替えのため臨時休館あり
料金:600円(特別展は別途料金)
松江ウォータービレッジ(ルイス・C.ティファニー庭園美術館&イングリッシュガーデン)

アールヌーボー時代の装飾美術家ルイス・C.ティファニーの作品を中心に展示する美術館。宍道湖を背景に華やかなイングリッシュガーデンが広がり、古きよきヨーロッパの香りが漂います。
お問い合わせ:TEL 0852(36)3111(美術館)
          TEL 0852(36)3030(ガーデン)
時間:9時〜16時30分(4〜9月は17時30分まで)
     最終入場は閉館30分前まで
     ※12月29日〜31日休館
料金:2000円


出雲大社は大きかった
  おおっ、やはり大きい。雑誌やテレビで知ってはいたものの、目の当たりにすると、その大きさに驚きます。初めて訪れた出雲大社。神楽殿にかけられた長さ13m 、太さ8m の大注連縄(おおしめなわ)は、10 月になると全国八百万の神々 が出雲大社に集まるという神話にふさわしく、迫力と厳かさに満ちていました。
 実は出雲大社駐車場から歩いていくと、最初に出合うのが神楽殿。堂々とした造りとそこにかかる大注連縄に「ここが本殿」と勘違いしそうですが、国宝の本殿などがあるのはその先。玉砂利の音も清々しく歩みを進めていくと、拝殿と奥に鎮座する本殿が濃い縁に囲まれて姿を現します。
 出雲大社は大国主命(おおくにぬしのみこと)を祭る神社。 「古事記J によると、地上世界「芦原の中つ国」(あしはらのなかつくに)を最初に統一した神として伝えられています。 ところが、天上世界「高天の原」(たかまのはら)をもつ天照大御神(あまてらすおおみかみ)の子孫がこの国に降臨することになり、国土を護る代わりに国の守り神として出雲大社に鎮座することになったのです。
 あそこの宿のタ食はよかった、ここの温泉は気持よかったなどといっているのんきな旅人とはあまりにもかけ離れた壮大な話ですが、それに加えて本殿自体も大規模を誇っていました。10世紀後半に著わされた書物には、束大寺大仏殿より高い、48m もあったと記されているのです。事実、平成12年の発掘調査では境内遺構で巨大な柱が発掘され、いわば’”空中神殿”、の存在が証明されました。さらに古代には96mの高さがあったと、まさに雲をつくような話が伝説として残っています
 そんなことが充分、納得できる厳粛な雰囲気をもつ出雲大社。境内を歩くだけでも、心は澄んでいきますが、ただひとつ残念だったのはご利益がないかもしれないこと。注連縄に向かってコインを投げ、それがささるとよいことがあるといわれているのですが、これがいくら投げても神々のもとへ届かないのです。宿のタ食がどうのこうのといっているような輩は、天上からさじが投げられているのかもしれません。
出雲のガイド

出雲大社

「因幡の白ウサギ」 などの神話に登場し、大黒様としても親しまれる大国主命が祭神。現在の本殿は延亨元年(1744)建造で日本最古の神社建築様式である「大社造」に則ったもの。拝殿は昭和26年に惜しくも焼失しましたが,昭和34年(1959 )に再建され、今に至ります。
お問い合わせ:TEL 0853(53)3100
境内自由
旧JR 大社駅

平成2年の大社線廃線に伴い、駅としての機能は終わりましたが、駅舎は保存され、シャンデリアや.貴賓室、出札室などに、古きよき鉄道時代の面影が残ります。大正13年(1924 )改築の千鳥破風の屋根が堂々とした雰囲気。
お問い合わせ:TEL 0853(53)3111(大社観光商工課)
時間:9時30分〜17時(駅舎内)
見学自由
神門通り

堀川にかかる宇迦橋前の巨大鳥から出雲大社参参道手前の鳥居までは神門通りと呼ばれ、土産物店や出雲そば、地元銘菓の店などが並ぶにぎやかな門前町。店々をのぞきながらの散策も楽しいもの。
高瀬川沿いの町並み

市街の中心の大津町から今市町にかけて東西に流れる高瀬川は江戸時代中期、灌漑用水として大梶七兵衛が造成。全長12kmの水路沿いには柳並木が続き、かつて舟の往来で賑わった頃と変わらぬ風情が残ります。

豊かな湖の豊かな料理
 全国で7 番目の大きさをもつ宍道湖。タ日が映える風情豊かな湖は、海水と淡水が混じる汽水湖であるため、魚介類も豊か。なかでも、スズキ、モロゲエビ、ウナギ、アマサギ、シラウオ、コイ、そしてシジミは宍道湖七珍といわれ、これまた豊かな食文化を育んできました。
 有名なのはシジミですが、おすすめしたいのはスズキの奉書焼き。スズキを奉書紙で包み、熱した灰で蒸し焼きにした料理で、松江藩第七代藩主であり不昧の茶号をもつ粋人であった松平治郷も好んだといわれます。
 さて、旅人の前に運ばれてきたのは結構、大きな皿に盛られた奉書焼きです。「きようは、大振りのスズキが手に入ったので」と、店の人。どれどれと、ほんのり焦げ目がついた紙を開けると、ほのかな湯気が立ち上がりま丈そこに現れたのは確かに大きなスズキ。ほっこり焼き上がった白身は香ばしく、「うまい、うまい」といただくうちに、いつの間にか胃の中に収まってしまったのでした。
 ところで、七珍のなかには1 年中、食べられるものもありますが、どうせ味わうなら旬を待ちたいもの。うれしいことに本号が出る頃には多くが旬を迎え、とびきりのおいしさになるといいます。土地のものは、その土地で味わってこそ。さっそく、旅の手配、いかがです?
湯も人の心も温かなまち
 温泉王国でもある島梶その代表格が松江に隣接すろ玉造温泉で、「出雲国風土記」や「枕草子」にも登場するほど、古い歴史があります。そんな有名温泉地もいいのですが、旅情をかき立てるのはちよっとひなびた温泉。そこで、島根県中西部に位置する温泉津温泉に出かけました。
 温泉津は靴静銀山とともに栄えた温泉街16世紀から17世紀にかけて、ここにある港から盛んに銀が積み出され、その運搬に使われた旧銀山街道の両側に10軒ほどの温泉宿が並びます。けれど、街道とはいっても、車1台が通れるくらいの広さ。当時は湯治場として賑わったというまちは華やかさこそありませんが、宿の浴衣にゲタという姿がよく似合うたたずまいで、旅人の目には風情豊かに映ります。
 さっそく、元湯泉薬湯という共同湯に足を運んでみました。ここは温泉津温泉発祥の湯で、発見は約1400年前。淡い茶褐色をしており鉄分を含んでいるため、浴槽の縁は艶やかなアメ色になっています。これはいい湯の予感。かかり湯もそこそこに、肩までどっぷりつかると、ああ〜、やっばり極楽でした。一気に体がほぐれていき、疲れは湯気とともにどこへやら。地元のみなさんの笑顔に、心も癒されていきます。
 その温泉津から国道9号線を西に下ることしばし。江津市郊外にあるのが有福温泉です。山間の小さな里に温泉宿が折り重なるように建つここも、旅人にはうれしい静かな温泉街。およそ1300年前に開かれ、”古来より名湯が沸く福ありの里”といわれていろそうで、無色透明の単純アルカリ泉はいわゆる”美人の湯”として知られます。
 共同湯のひとつ、御前揚に入ると、そこには美人ならぬ、”昔の”美男が湯舟のなかに。その気持ちよさそうな顔を見ていると、やはりこちらでも心が癒されます。
 地元で親しまれている小さな温泉そこにわざわざ出かけるのも、旅の醍醐味。こんな素敵な寄り道をどんどん楽しめば、旅はますます豊かなものになるはずです。
温泉津温泉、有福温泉、周辺のガイド

やきものの里

温泉津は江戸時代から焼き物が盛んだった地。飴色の大きな水がめなどが焼かれていました。ここには巨大な登り窯が再現されているほか、資料室や作陶体験ができる創作室があります。
お問い合わせ:TEL 0855(65)4139
時間:9時〜17時(創作室は15時まで)※水曜日休館
料金:300円(土ひねり1600円〜皿などの絵付け1000円〜)
仁摩にまサンドミュージアム

全面ガラス張りのピラミッドのような建物の砂の博物館。世界の「鳴き砂」に関する資料を展示。1t の砂を落とす巨大な1年計の砂時計も。
お問い合わせ:TEL 0854(88)3776
時間:9時〜16時30分
   ※水曜日休館(変更の場合あり)
料金:700円
しまね海洋館アクアス

シ口イルカをはじめ、世界の珍しい生き物を集めた水族館。シ口イルカやアシカ、アザラシなどのパフォーマンスが人気。ミュージアムショップやレストランもあります。
お問い合わせ:TEL 08555(28)3900
時間:9時〜17時
    ※火曜日休館(祝日の場合は翌日)
     12月31日〜1月1日休館
     (GW、夏休み、12月28日〜30日は休まず営業)
     (7月20日〜8月31日は18時まで)
料金:1500円
観光タクシーのお問い合わせは
富士第一交通0854(82)0660
 0854(82)0661
みなと第一交通0855(22)0900

※当コンテンツは季刊情報誌Ones Vol.11の記事から転載しております。
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   あらかじめご了承ください。
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